出羽の花双一(でわのはな そういち)

日本大学出身の力士です。学生横綱になっての入門ですが、初土俵の場所で負け越してしまいました。これは非常に珍しい記録です。その後8場所目にして十両昇進をしましたが定着できず、一年後に十両に再昇進するというもたつきぶりでした。しかし、それから後は、じっくりと実力を畜えて幕内上位へと昇進して来ました。最初のもたつきは、実力というよりも、大相撲の雰囲気に慣れていない事が原因だったようです。

この人は出羽海部屋で期待されて入門したようですね。「出羽の花」という四股名にそれがあらわれています。この四股名は、理事長となった武蔵川親方が現役時代名乗っていたものです。それを与えられたのですから、部屋での期待を集めての事とおもわれます。

出羽の花の相撲は、見ためには派手さのないものでしたが、安定した、実力の裏づけのある味わい深いものでした。左右両手の強い握力を利した両回しのひきつけ、出し投げ、小股掬い、寄りといった攻めが流れるようでした。それと雰囲気のいい人で、土俵に立っただけで人を惹きつけるものがありました。こういう味わいのある人というのは中々ないもので、そういった面でも貴重な人でした。

酒豪として有名でしたが、若い人の面倒もよくみ、部屋頭としての責任をも十分に果した人でした。残念なのは、あと一歩で大関という成績まで上げていたのに、さあ昇進という場所が不調で、ついにチャンスを逃がしてしまった事です。もし大関となっていたら名大関となっていたに違いない人なので、惜い事をしたと思います。

引退後は出来山親方となって、現在は出羽海部屋の親方となっています。時々相撲放送のゲストに出演しています。地味な話ぶりですが、なかなか内容があり私は楽しみにしています。


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