多賀竜昇司(たがりゅう しょうじ)

歴史に残る快挙をなしとげています。それは蔵前国技館最後の場所で平幕優勝をしているからです。この優勝は、蔵前国技館最後の感動的なセレモニーとあいまって、今でも忘れ難いものがあります。・・・といっても本人は四つ相撲得意の、派手さのない人なんですけどね。でも、いろいろと話題になってしまう人なのも事実でした。

多賀竜が最初に話題になったのは、身内の不幸でした。母親が交通事故でなくなってしまったのです。それが5月でした。それから「いい相撲をとるのが、一番の供養だ」と思って土俵に上がっていました。それが、はからずも9月場所の平幕優勝へとつながったわけなのです。ですから優勝後の多賀竜が「いい事と悪い事がいっぺんに来た」というような事を言っていたのが印象的でした。

多賀竜の相撲はいわゆる「玄人好み」の相撲でした。右と左からの攻めも強烈で、これを生かしての右四つ、出し投げで崩しての寄りが得意でした。最近では四つ相撲のうまかった力士の一人ですね。四つに組んだ時の形が本当に良かったですね。こういう人の相撲を見ていると、四つ相撲というのは味わいのあるものだと思いますね。

堅実な相撲ぶりで、幕内中堅くらいでよく相撲を取っていました。そんな人が劇的な優勝をしたりするのですから、本当におもしろいですね。その優勝の場所、多賀竜が優勝しそうになると親方までが「おまえ、とんでもない事を考えているんじゃないだろうな」といってヘンな激励をしたそうです。結局その「とんでもない事」をしてしまったわけですけど、この場所の多賀竜は本当に安定していて、幕内優勝として恥ずかしくないものだったと思います。

そういえば、もう一つ話題になる事をしていましたっけ。幕内優勝後に、十両で相撲を取って、この時もやっぱり優勝してしまった事がありました。地味な人なのに時々話題を提供するところがおもしろいですね。

引退後は勝ノ浦親方となっています。あの四つ相撲を受け継ぐ人が出て来るといいですね。


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